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北海道大学 医学部保健学科
大学院保健科学院
大学院保健科学研究院

ジャンプ着地動作時の膝・股関節運動や床反力がアキレス腱の負荷と関係することを発見~スポーツ外傷・障害を予防するための着地動作指導法の発展に期待~(リハビリテーション科学分野 越野裕太助教)

ポイント

  • スポーツ外傷・障害のリスクが高い動作であるジャンプ着地動作中の下肢関節の運動パターンおよび関節モーメント、床反力の大きさや作用点、そしてアキレス腱に加わる負荷を解析した。
  • 大きな膝関節屈曲角度、小さな股関節屈曲角度、より前方に位置する床反力作用点、大きな床反力が、アキレス腱に加わる負荷と関係することが明らかとなった。
  • 従来、膝関節外傷予防の観点から膝関節を大きく屈曲する着地動作の指導が一般的であったものの、本研究は膝関節屈曲を増大させずに、股関節の屈曲を増大させ床反力を吸収する着地動作が、アキレス腱の外傷・障害予防に重要である可能性を示唆した。

概要

ジャンプ着地動作は膝前十字靱帯損傷、足関節捻挫、そしてアキレス腱の腱断裂や腱障害といった、種々のスポーツ外傷・障害のリスクが高い動作です。したがって、どのような着地動作パターンがこれらの外傷・障害リスクに関与するかを理解することが、予防のためには重要です。そこで、本研究は健常者を対象とし、Drop vertical jumpというジャンプ着地動作を、三次元動作解析システムを用いて記録しました。着地動作中の下肢関節の運動パターンおよび関節モーメント、床反力の大きさや位置を解析しました。また、足関節の運動パターンと関節モーメントからアキレス腱に加わる負荷を算出しました。

その結果、単変量回帰分析では、膝関節の小さな屈曲と大きな外反、小さな股関節屈曲、小さな体幹前傾、大きな床反力、より前方に位置する床反力中作用点が、アキレス腱負荷の増大と関係しました。また、性別が男性であることもアキレス腱負荷の増大と関係しました。多変量回帰分析では、大きな膝関節屈曲、小さな股関節屈曲、より前方に位置する床反力作用点、大きな床反力が、アキレス腱に加わる負荷と関係することが明らかとなりました(adjusted R2 = 0.863、 p < 0.001)。

膝前十字靱帯損傷といった膝関節外傷を予防するために、膝関節の屈曲を増大させる柔らかい着地指導が従来からよく実施されています。しかし、本研究から膝関節屈曲が増大した着地動作は、アキレス腱の負荷を増大させる可能性が示唆されました。また、本研究結果から、股関節屈曲を増大させることで床反力を吸収し、床反力作用点を過度に前方に寄せない着地動作がアキレス腱にとっては安全であると考えられます。今後、本研究から得られた所見に基づき、ジャンプ着地動作に対する指導介入の効果を検証することによって、アキレス腱の腱断裂や腱障害だけでなく、あらゆる下肢スポーツ外傷・障害の予防につながることが期待されます。

出版情報

・論文タイトル
Hip and knee kinematics, center of pressure position, and ground reaction force are associated with Achilles tendon force during jump landing

・著者
Yuta Koshino, Tomoya Ishida, Shohei Taniguchi, Mina Samukawa, Satoshi Kasahara, Harukazu Tohyama
Faculty of Health Sciences, Hokkaido University, Sapporo, Japan

・ジャーナル
Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports

・DOI
10.1111/sms.14510

・掲載日
2023年10月3日

お問い合わせ先

北海道大学大学院保健科学研究院 リハビリテーション科学分野・助教 越野裕太
E-mail:y-t-1-6[at]hs.hokudai.ac.jp [at]を@に変えてください

投稿日: 2024年02月19日

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