
北海道大学大学院保健科学研究院では、70余名の専任教員が特任教員等とともに、基盤看護学、創成看護学、医用生体理工学、病態解析学、リハビリテーション科学、健康科学の6つの分野または寄附講座等に所属し、日夜保健科学研究に取り組んでいます。保健科学は、健康であるとはどのような状態か、健康を保つには何が必要か、健康を損ねた時にはどうすれば良いかなど、医学的事項を包括する広い研究対象を有する学問領域です。本研究院の構成員は、医師や看護師、診療放射線技師、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士などの医療専門職資格を有する研究者ばかりではなく、獣医学や薬学、工学、教育学など多様なバックグランドを持つ研究者が集結しています。
現代社会は、温暖化と地球規模での気候変動、想定を超えた大規模災害や人類を脅かす新興感染症のパンデミック、紛争、高齢社会の少子化など、多くの課題に直面しています。こうした状況においても、最も大切なのは人々の健康であり、人々の健康を保つために私たちに何ができるのかを考えるのが本研究院の使命であると考えています。立ち向かわなければならない課題は山積みですが、本研究院の強みである多様性を活かして相互に連携し、英知を統合することで課題を一つ一つ解決していきましょう。
以下は私の雑感です。科学的な研究成果は社会に還元されるべきものであり、そのため成果につながる見込みの高い研究が重要視されることは、当然のことと言えます。その一方で、研究者を目指す若者が激減していることも事実で、近年の科学技術衰退の大きな要因となっています。なぜなのか。研究者を目指しても先が見えない、十分な収入が期待できない、苦労することが多くQOLが低い、理由はたくさんあるのだと思います。では、自分はなぜ研究者の道を選んだのか。私の答えは、恩師の研究テーマの深淵性に心を奪われたから。教授の立場となり、一指導教員として、学生や後進の研究者にそのような奥の深い研究テーマを提示できるか、真価を問われていると感じる今日この頃です。
大学院保健科学院長 石津 明洋