好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps: NETs)は、細菌などに感染した際に活性化した好中球が放出する構造物です。NETsは好中球自身のDNAに様々な抗菌タンパクが絡み合った構造をしており、細菌を捕捉し殺菌することから、重要な感染防御機構を担っています。一方で、抗菌タンパクなどの様々な物質を細胞外に放出することで、血管内皮細胞の障害や血栓の形成など生体に負の影響を与えるため、役割を終えたNETsは血漿中のDNase Iにより速やかに分解されます。
これまでにいくつかの疾患や病態について、NETs形成異常や制御異常が生じることを明らかにしてきました。抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎の病変部にはDNase Iにより分解されにくい性質のNETsが形成されていました。唾液にはNETs誘導能があることが報告されていますが、再発性のアフタ性潰瘍を呈するベーチェット病患者の唾液ではNETsの誘導能が低下していました。NETsの形成異常や制御異常に着目し、様々な疾患の病因・病態の解明に取り組んでいます。