放射線はまさに「両刃の剣」といえます。我々の目には見えませんが、医療や産業において人類に多大な恩恵をもたらす有益なツールである一方、被ばくに伴う発がんなどの危険性も併せ持っています。放射線生物学は、分子・細胞・組織・臓器・個体・集団などのあらゆる階層において、放射線が生物に及ぼす諸作用を研究する学術分野です。1895年のX線発見後、ただちに放射線の生体への影響が明らかになりましたが、その詳細なメカニズムについては依然として明らかになっていない部分が多く残されています。
当研究室では、量子ビーム技術、生化学・分子生物学的手法、モデル動物解析、大規模コホート調査(疫学データ)、バイオインフォマティクスなどの多様なアプローチを駆使して、放射線生物学研究に取り組んでいます。さらに、この研究から得られた知見を活用して、革新的な診断・治療の開発や、高精度な放射線リスクアセスメントの確立も目指しています。