私たちの研究室では、“微生物相互作用”をキーワードに、細菌が細胞に持続的に感染する機構や実際の環境でのありのままの微生物の生態を明らかにするために、以下の研究を細胞・分子レベルで精力的に行っています。
まずヒト病原性細菌のヒトへと適応進化の道筋を明らかにするために、原生生物の一種であるアカント・アメーバに共生するクラミジアの原始の姿をとどめた偏性細胞内寄生性の難培養性細菌 (環境クラミジア) を用いた実験を進めています。性感染症等を起こす病原性クラミジアはゲノムのスリム化が起こりヒト細胞に適応進化したと考えられていますが、この環境クラミジアは過酷な自然環境に生息するアメーバの共生細菌故に、ゲノムのスリム化はさほど起こっておらず、病原性クラミジアが適応進化の過程で邪魔になり捨てたさまざまな分子を温存していると予想されます。その喪失した分子の中に、病原体がヒトへと適応進化するためのヒントが隠されていると信じています。
また私たちは、自然環境に普遍的に生息する原生生物の一種繊毛虫の中に集積した細菌間の接合伝達頻度が大幅に増すことを発見しました。繊毛虫は耐性菌が選択される自然環境の「ホットスポット」かもしれません。さらに札幌地下歩行空間の菌叢変化の要因探索も行っています。地下歩行空間に浮遊する菌叢が、その空間中に浮遊する微粒子数や温度、さらに通行人の数に依存して、ダイナミックに変動する様子を可視化することに成功しました。
さらに最近の研究では、札幌の土壌から株化したアメーバが、その共生細菌依存的に生きたヒト病原細菌 (大腸菌やサルモネラ) をアメーバ表層に乗せ運搬することを発見しました。運搬される細菌にとっては貧栄養の場から富栄養の場へと効率良く移動する手段となり、アメーバにとって抱えた細菌は、アメーバの非常食になるのではと考えられています。
興味がある人はぜひ一緒に研究しませんか。