⾮標的LC/MS を⽤いた肥満誘発⾷を与えたマウスモデルにおける運動の多コンパートメント脂質代謝への影響(健康科学分野 Bomme Gowda SIDDABASAVE GOWDA准教授)
ポイント
- LC/MS を⽤いた⾮標的リピドミクス解析を、対照⾷および肥満誘発⾷(OBD)を与えた安静群・運動群のマウスの⾎漿・肝臓・左⼼室・脾臓・糞便において実施することに成功した。
- 363種類の脂質分⼦種を同定した。組織・⾎漿においてはDHA含有リン脂質、 LPE(22:5)およびPG(22:6/22:6)が群間分離を駆動する主要代謝物として特定され、糞便ではモノアシルグリセロールが優勢であった。
- 短期間の運動はOBD 下で⾎漿セラミドを低下させ、糞便脂質変化を部分的に回復させた。運動と対照⾷の組み合わせにより腸内細菌由来のFAHFA が上昇し、⾷事と運動の有益な相互作⽤が⽰唆された。
概要
飽和脂肪や超加⼯⾷品を多く含む肥満誘発⾷(OBD)の慢性的な摂取は、全⾝性炎症および肥満・2 型糖尿病・⼼⾎管疾患などの⾮感染性代謝疾患の主要因となっている。運動が炎症軽減と代謝改善に有効な⾮薬理的介⼊であることは広く知られているが、肥満誘発⾷条件下で運動が複数の⽣体コンパートメントにわたって脂質代謝物にもたらす具体的な変化については、これまで包括的に明らかにされていなかった。
本研究では、2ヶ⽉齢の雄性C57BL/6 マウスに対照⾷またはOBDを10ヶ⽉間投与した後、2週間にわたり安静群(Sed)または運動群(Exe)に分け、⾮標的LC/MS を⽤いて⾎漿・肝臓・左⼼室・脾臓・糞便における脂質代謝物を解析した。

多変量解析では、安静・運動の両群において⾷事群間で明確な脂質シグネチャーの分離が認められた。OBD マウスではLPE(22:5)が肝臓・⾎漿・左⼼室において有意に上昇し、DHA 含有PG(22:6/22:6)は有意に低下した。運動はこれらの脂質変化の⼀部を回復させ、特に⾎漿セラミドを低下させるとともに糞便グリセロ脂質プロファイルを部分的に改善した。さらに、運動と対照⾷の組み合わせによりFAHFA 類が上昇し、腸内代謝への相乗的な有益効果が⽰唆された。
本研究の知⾒は、DHA 含有リン脂質およびグリセロ脂質が⾷事・運動に応じた複数コンパートメントにわたる脂質リモデリングの重要な応答マーカーであることを⽰している。
出版情報
研究論文名:Effect of exercise on multi-compartment lipid metabolism in murine models fed an obesogenic diet using non-targeted LC/MS
著者:Rachana M. Gangadhara¹, Divyavani Gowda², Siddabasave Gowda B. Gowda¹,², Gunjan Upadhyay³,⁴, Nikhil Chainani³, Vasundara Kain³,⁴, Ganesh V. Halade³,⁴, Shu-Ping Hui²
1Graduate School of Global Food Resources, Hokkaido University
2Faculty of Health Sciences, Hokkaido University
3Heart Institute, Department of Internal Medicine, University of South Florida
4Morsani College of Medicine, University of South Florida
ジャーナル:Frontiers in Nutrition
※IFおよびカテゴリーランキング:IF = 5.1 and Ranking = Top 20% (Q1)
DOI:https://doi.org/10.3389/fnut.2025.1673002
掲載日:2025年10月23日
お問い合わせ先
北海道大学大学院保健科学研究院
Dr. Siddabasave Gowda B. Gowda
E-mail:gowda[at]gfr.hokudai.ac.jp [at]を@に変えてください