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北海道大学 医学部保健学科
大学院保健科学院
大学院保健科学研究院

リン系難燃剤曝露レベルが高いと学童の喘鳴、FeNOと好酸球高値のリスクが増加する:北海道スタディ(健康科学分野 池田敦子教授)

ポイント

  • 13種類の尿中PFRs代謝物を用いて日本人学童の曝露状況を測定した。
  • 個々のPFR、PFRsの複合曝露と学童のアレルギーの関連を調べた。
  • PFRs曝露レベルが高いと、喘鳴、FeNOと好酸球高値のリスクが増加する。

概要

リン系難燃剤(PFRs)は難燃性可塑剤として日用品の材料に添加され、製品の使用とともに環境中に溶出する。PFRs曝露レベルが高いと、喘息やアレルギーのリスクが上がることが報告されている。しかし、PFRs曝露とT2バイオマーカーとの関連を示す疫学的証拠はなかった。そこで本研究は、PFRs複合曝露と学童のアレルギーの客観的指標であるT2バイオマーカーとの関連を明らかにすることを目的とした。

2017年9月から2020年3月にかけて、「環境と子どもの健康に関する北海道スタディ」参加者のうち、札幌市とその近郊に在住する9-12歳の学童(427名)に対して調査を実施した。13種類の尿中PFRs代謝物をLC-MS/MSで測定した。アレルギー症状はISAAC質問票で評価した。T2バイオマーカーとして、末梢血中好酸球数、FeNO濃度、血清総IgE値を測定した。

図のA.に個々のPFRs、B.にPFRsの複合曝露とアレルギー症状およびT2バイオマーカーとの関連を示した。TDCIPP濃度が自然対数(≈2.7)高くなるごとの喘鳴のオッズ比は(OR, 95%CI:1.36, 1.07 – 1.72)だった。FeNO(≧35ppb)のオッズ比はTDCIPP(1.19, 1.02 – 1.38)、ΣTPHP(1.81, 1.40 – 2.37)、ΣTBOEP(1.40, 1.13 – 1.74)で有意に高かった。好酸球数(≧300/μL)のオッズ比はΣTPHP(1.44, 1.15 – 1.83)で有意に高かった。複合曝露モデルでは、quantile g-computationにおいて、すべてのPFRs濃度が一四分位高かった時のFeNO(≧35ppb)のオッズ比は(1.48, 1.18 – 1.86)だった。Basian Kernel Machine Regressionモデルにおいて、PFRs複合曝露はFeNO(≧35 ppb)および好酸球数(≧300/μL)と正の相関を示した。

本研究は、PFRs濃度が高いと学童の喘鳴、FeNOと好酸球高値のリスクが増加することが認められた。PFRs曝露は、学童のFeNOおよび好酸球値を高めることにより、喘息やアレルギーの症状を引き起こす可能性が示唆される。曝露レベルの高い対象者においてPFRsを含む製品の使用を控えることで、喘息やアレルギーの症状が低下する可能性がある。

出版情報

・論文タイトル
Exposure to organophosphate flame retardants and plasticizers is positively associated with wheeze and FeNO and eosinophil levels among school-aged children: The Hokkaido study

・著者
Yi Zenga, Houman Goudarzib, Yu Ait Bamaic,d, Rahel Mesfin Ketemac,e, Maarten Roggemand, Fatima den Oudend, Celine Gysd, Chihiro Miyashitac, Sachiko Itoc, Satoshi Konnob, Adrian Covacid, Reiko Kishic, Atsuko Ikeda-Arakic,e*
a Graduate School of Health Sciences, Hokkaido University, Sapporo, Japan
b Department of Respiratory Medicine, Faculty of Medicine, Hokkaido University, Sapporo, Japan
c Center for Environmental and Health Sciences, Hokkaido University, Sapporo, Japan
d Toxicological Center, University of Antwerp, Wilrijk, Belgium
e Faculty of Health Sciences, Hokkaido University, Sapporo, Japan
* 責任著者

・ジャーナル
Environment International
(IF: 11.8, カテゴリーランキング6.18%)

・DOI
10.1016/j.envint.2023.108278

・掲載日
2023年10月20日

お問い合わせ先

北海道大学大学院保健科学研究院 健康科学分野
教授 池田敦子
E-mail:AAraki[at]cehs.hokudai.ac.jp [at]を@に変えてください

投稿日: 2024年04月09日

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