メインコンテンツへスキップ

北海道大学 医学部保健学科
大学院保健科学院
大学院保健科学研究院

LC-MS/MSによる豚脳などにおけるプラズマローゲンの分析(病態解析学分野/健康科学分野 惠 淑萍教授)

ポイント

  • 脳は豊富な総プラズマローゲンを含んでおり、その 95% 以上がエタノールアミン型プラズマローゲンである。
  • 脳由来のプラズマローゲンの製造過程において、アセトン沈殿、エタノール抽出、乾燥はプラズマローゲン含有量に大きな影響を与えないが、凍結融解のサイクルを繰り返す過程では顕著なプラズマローゲンロスが生じた。
  • 総プラズマローゲン含量は豚脳由来製品では一番多く、次いで卵由来製品が多かった。大豆由来製品ではプラズマローゲンが検出されなかった。

概要

プラズマローゲンは肝臓において合成され、リポ蛋白質として血中に存在するリン脂質であるが、アルツハイマー型痴呆では発症前から血中のエタノールアミン型プラズマローゲンレベルが低下し、症状の進行と共にさらに低下することが報告されている。プラズマローゲンはグリセロリン脂質の特定のサブクラスであり、グリセロール骨格の1位にビニルエーテル、2位に多価不飽和脂肪酸を有し、さらに3位のヘッドグループにより、プラズマローゲンはエタノールアミン型とコリン型の2種類に分類される。プラズマローゲンは酸化損傷を防止し、ミトコンドリア機能を維持し、炎症を抑制し、神経細胞のニューロンアポトーシスを抑制することが証明されており、アルツハイマー病患者の認知機能を改善し、認知機能や記憶喪失を軽減する可能性がある。

機能性グリセロリン脂質であるプラズマローゲンは、抗酸化や抗炎症などの有益な栄養効果で知られている。 脳はプラズマローゲンが豊富な資源であるため、本研究は、工業生産プロセスがプラズマローゲンの含有量と組成に影響を与えるかどうか、またどのように影響するか、プラズマローゲンベースの健康食品開発の可能性を探索することを目的とした。本研究では、液体クロマトグラフィーとタンデム質量分析を利用して、脳産物や卵及び大豆についてプラズマローゲンを分析した。その結果は、すべての脳産物が豊富なプラズマローゲンを有し、その95%以上がエタノールアミン型であることを示した。アセトン沈殿、エタノール抽出、乾燥はプラズマローゲン含有量に大きな影響を与えなかったが、凍結融解サイクルを繰り返す製造プロセスでは顕著な損失が発生した。総プラズマローゲン含量は脳由来製品では一番多く、次いで卵由来製品が多かったが、大豆由来製品ではプラズマローゲンが検出されなかった。

今回の研究は、豚脳由来プラズマローゲン生産の実現可能性を示すだけでなく、プラズマローゲンサプリメントやヘルスケア製品の開発と品質管理に可能な方策も提供した。

出版情報

・論文タイトル
Plasmalogen Profiling in Porcine Brain Tissues by LC-MS/MS

・著者
Yue Wu1, Yifan Chen1, Min Zhang2, Hitoshi Chiba3, Shu-Ping Hui1*
1 Faculty of Health Sciences, Hokkaido University, Sapporo, Japan
2 GLB Co., Ltd, Kobe, Japan
3 Department of Nutrition, Sapporo University of Health Sciences, Sapporo, Japan
* 責任著者

・ジャーナル
foods
(IF: 5.2 (2022), FOOD SCIENCE & TECHNOLOGY カテゴリーランキング23.9%)

・DOI
10.3390/foods12162990

・掲載日
2023年8月8日

お問い合わせ先

北海道大学大学院保健科学研究院 病態解析学分野/健康科学分野
教授 惠 淑萍
E-mail:keino[at]hs.hokudai.ac.jp [at]を@に変えてください

教員情報

投稿日: 2024年04月08日

Cookie を有効にする

このサイトをご利用されるときは必ず「サイトポリシー」をご確認ください。このウェブサイトではサイトの利便性の向上のためにクッキーを利用します。本サイトを引き続き閲覧されることで、クッキーの使用を許可したとみなされます。