ポイント

• ヒドロキシ脂肪酸の短鎖脂肪酸エステル（SFAHFA）の60種の異性体を初めて合成した。
• SFAHFAsのLC/MS定量法を開発した。
• ラット腸内におけるSFAHFAの領域特異的分布を調べた。
• 高脂肪食はラット腸内容物および糞便中の酢酸およびプロパン酸由来のSFAHFAを減少させた。

概要

ヒドロキシ脂肪酸の短鎖脂肪酸エステル（SFAHFA）は、ヒドロキシ脂肪酸ファミリーの脂肪酸エステルに属する新しいクラスの内因性脂質である。我々は以前、その化学構造を明らかにし、生物学的意義の可能性について論じた。今後、代謝や炎症のマーカーとしてSFAHFAを測定する必要性が高まると予想される。本研究では、12種類のヒドロキシ脂肪酸(C16-C24)と5種類の短鎖脂肪酸(C2-C6)を組み合わせて、60種類の異性体SFAHFAを合成した。固相抽出により濃縮されたSFAHFAのLC-MS/MS高感度定量法を確立した。この方法は、高脂肪食（HFD）を与えたラットから採取した腸内容物および糞便サンプル中のSFAHFAのプロファイリングに応用された。その結果、高脂肪食群の腸内容物中のSFAHFAは対照群と比較して有意に減少していた。糞便中のSFAHAの時間経過（0-8週間）プロファイルは、HFD投与後わずか2週間で酢酸エステルとプロパン酸エステルの有意な減少を示した。本研究は、SFAHFAの初めての合成および定量法を確立し、SFAHFAの供給源、様々な疾患における役割、潜在的な生化学的シグナル伝達経路の解明に利用できる可能性を示した。

上図は、SFAHFA脂質の腸内分布と、高脂肪食摂取後2週間で急激に減少したことを示している。

出版情報

・論文タイトル
Synthesis and quantification of short-chain fatty acid esters of hydroxy fatty acids in rat intestinal contents and fecal samples by LC-MS/MS

・著者
Siddabasave Gowda B. Gowda^1,2, Fengjue Hou³, Divyavani Gowda¹, Hitoshi Chiba⁴, Kentaro Kawakami⁵, Satoru Fukiya⁵, Atsushi Yokota⁵, Shu-Ping Hui¹*
¹ Faculty of Health Sciences, Hokkaido University, Sapporo, Japan
² Graduate School of Global Food Resources, Hokkaido University, Sapporo, Japan
³ Graduate School of Health Sciences, Hokkaido University, Sapporo, Japan
⁴ Department of Nutrition, Sapporo University of Health Sciences, Sapporo, Japan
⁵ Research Faculty of Agriculture, Hokkaido University, Sapporo, Japan
* 責任著者

・ジャーナル
Analytica Chimica Acta
(IF: 6.2 (2022), CHEMISTRY, ANALYTICAL カテゴリーランキング9.30%)

・DOI
10.1016/j.aca.2023.342145

・掲載日
2023年12月15日

お問い合わせ先

北海道大学大学院保健科学研究院 健康科学分野
准教授 Bomme Gowda SIDDABASAVE GOWDA / 教授 惠 淑萍
E-mail：gowda[at]gfr.hokudai.ac.jp / keino[at]hs.hokudai.ac.jp [at]を@に変えてください