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北海道大学 医学部保健学科
大学院保健科学院
大学院保健科学研究院

受胎前被ばくが導く次世代ミトコンドリアDNAの臓器特異的再編 ~ミトコンドリアゲノムから読み解く放射線の次世代影響~(医用生体理工学分野 福永久典准教授)

ポイント

  • 妊娠前に放射線を被ばくした両親マウスから生まれた仔マウスにおいて、ミトコンドリアDNA量(コピー数)が臓器ごとに異なって変化することを発見した
  • 仔の脳と肝臓では父親被ばく由来・母親被ばく由来のミトコンドリアDNAコピー数の変化がそれぞれ認められた一方、心臓では明確な変化はみられなかった
  • 受胎前被ばく後の両親マウスから生まれた仔マウスは出生時体重および肝重量が増加しており、さらに肝重量は肝臓のミトコンドリアDNAコピー数と負の相関がみられた

概要

北海道大学大学院保健科学研究院の福永久典准教授(環境健康科学研究教育センター副センター長)、清野良輔学術研究員は、両親の妊娠前の放射線被ばくが子どもの各臓器のミトコンドリアDNA量(コピー数)に影響することを、マウスを用いた研究で初めて明らかにしました。また、その影響は身体全体で一様ではなく、臓器ごとに異なる様式で現れることも判りました。さらに、肝臓のミトコンドリアDNAコピー数が小さいほど、出生時の肝重量が大きいという関連も認められ、ミトコンドリアゲノム制御の変化と出生時の臓器成長との関連が新たに示唆されました。

ミトコンドリアは、細胞の中でエネルギーを生み出す重要な小器官であり、独自のDNA(ミトコンドリアDNA)を持っています。このミトコンドリアDNAは、一つの細胞の中に数十から数千のコピー数が存在し、母系遺伝することで知られています。放射線は核DNAだけでなくミトコンドリアDNAにも影響を及ぼすことが知られていましたが、その影響が親から子へどのように伝わるのかについては解明されていませんでした。

本研究では、妊娠前にX線2 Gyを全身に単回照射した雄マウスと雌マウスを交配し、生まれた仔マウスの脳・心臓・肝臓に含まれるミトコンドリアDNAコピー数を詳しく解析しました。

まず、親マウスでは放射線照射の翌日に血液中のミトコンドリアDNAコピー数が一時的に増加しており、放射線に対する急性の体内反応が起きていることが確認されました。次に、仔マウスでは肝臓で両親いずれの放射線被ばく由来でもミトコンドリアDNAコピー数が低下していることが確認され、脳では父親が放射線被ばくした場合にのみ低下がみられ、臓器ごとに、そして被ばく親の由来によって、影響の現れ方が異なることが明らかになりました。一方、心臓では明確な変化は認められませんでした。

また、放射線被ばくを受けた親から生まれた仔マウスでは、出生時の体重および肝臓重量が有意に増加しており、体重と肝重量の間には正の相関が認められました。さらに、肝臓のミトコンドリアDNAコピー数と肝重量の間には負の相関も確認され、ミトコンドリアDNAの量的制御の変化と出生時の臓器成長との関連が示唆されました。

これらの結果から、放射線被ばくは親世代の体内反応を介して子どもの臓器ごとのミトコンドリアゲノム制御や出生時の成長特性に影響を及ぼす可能性が示唆されました。放射線次世代影響としてのミトコンドリアゲノム変化に関するこれらの新しい知見は、今後、より安全で合理的な放射線防護・健康リスク評価を可能とする基盤的知見として活用されるとともに、放射線遺伝学の新境地を切り拓くブレイクスルーになるものと期待されます。

図. 本研究成果の概要
妊娠前の放射線被ばくは、子どもの臓器ごとにミトコンドリアDNA量を変化させ、出生時の体重や肝重量の増加と関連していたことを示す。

本研究は、科学技術振興機構(JST)創発的研究支援事業「環境放射線被ばく後の精子形成と次世代影響」(JPMJFR211E)の支援を受けて実施されました。なお、本研究成果は2026年1月30日(金曜日)に国際科学誌Redox Biologyにオンライン掲載されました。

出版情報

・研究論文名
Intergenerational and organ-specific alterations in mitochondrial DNA copy number following preconception irradiation(受胎前被ばくによるミトコンドリアDNAコピー数の世代間および臓器特異的変化)

・著者
清野 良輔、福永 久典(責任著者)

・ジャーナル名
Redox Biology(生化学・分子生物学の専門誌)
※IFおよびカテゴリーランキング:IF 11.9, BIOCHEMISTRY & MOLECULAR BIOLOGY 15/320

・掲載日
2026年1月30日(金曜日)

※詳細は、北海道大学プレスリリースをご覧ください。

お問い合わせ先

北海道大学大学院保健科学研究院 准教授
北海道大学環境健康科学研究教育センター 副センター長
福永 久典(ふくなが ひさのり)
E-mail:hisanori.fukunaga [at] hs.hokudai.ac.jp [at]を@に変えてください

教員情報

投稿日: 2026年02月04日

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