メインコンテンツへスキップ

北海道大学 医学部保健学科
大学院保健科学院
大学院保健科学研究院

二重課題遂行時の脳内葛藤を表現する局所脳活動と神経ネットワークを解明(リハビリテーション科学分野 澤村大輔教授)

ポイント

  • 従来の立位・歩行ではなく、臨床のリハビリテーション場面での汎用性を踏まえ、座位で安全に実施できる認知-運動二重課題を採用した。
  • 若年成人においても高い認知負荷を伴う認知-運動二重課題では干渉効果が顕著となる。
  • 二重課題遂行時には右背側前頭前野(DLPFC)および右前頭頭頂ネットワークのトップダウン信号が増加する。

概要

北海道大学大学院保健科学研究院の澤村大輔教授、同大学院保健科学院博士後期課程の三浦拓氏の研究グループは、明治大学大学院理工学研究科の小野弓絵教授との共同研究として、臨床で広く普及している二重課題トレーニングの核となる二重課題干渉(DTi)に着目し、リハビリテーションのエビデンス構築に繋がる神経メカニズムの解明を試みました。

これまでの先行研究の知見を基に課題特異的な脳活動パターンを特定したうえで、それぞれの課題関連脳活動の領域がオーバーラップする(二重題遂行時に神経資源の競合が生じると仮定される)認知課題、運動課題を採用しました。運動課題には、従来の歩行や姿勢制御課題ではなく、安全かつ汎用性の高い座位で実施可能な巧緻運動課題を採用しました。

右利きの健康な若年成人34名を対象とし、非利き手での描画課題と数字の連続加算を行うpaced auditory serial addition test(PASAT)を同時または単独で実施した際の脳活動を計測しました。結果として、二重課題条件では、単一課題条件と比較して認知および運動課題、両方の成績低下、また、二重課題条件では右DLPFCの活動増加および右DLPFCから右頭頂皮質へのトップダウンの因果性結合の増加が認められました。さらに、二重課題条件と単一課題条件における因果性結合の変化とPASATの成績変化に有意な負の相関が示されました。

本研究の結果は、DTiが若年健常成人でも起こりうること、右DLPFCと前頭頭頂ネットワークがDTiにおける重要な神経基盤であることを示唆します。本研究は、DTiのメカニズムについて因果性結合解析より右前頭頭頂ネットワークの関与を明らかにした初の研究です。本研究の知見は、DTiとその根底にある神経メカニズムに関する新たな洞察を提供するものであり、高齢者だけでなく、認知機能低下を伴う比較的若年の精神疾患や脳疾患患者における認知・運動二重課題トレーニングの臨床有用性につながることが期待されます。

図1. 研究の実施環境および課題(描画課題とPASAT)の概略図
図2. 二重課題に特異的な右DLPFCの活動と右前頭頭頂領域における因果性結合の増加

出版情報

・論文タイトル
Regional Brain Activity and Neural Network Changes in Cognitive-motor Dual-task Interference: A Functional Near-infrared Spectroscopy Study

・著者
Hiroshi Miuraa,b, Yumie Onoc, Tatsuya Suzukic,d, Yuji Ogiharab, Yuna Imaib, Akihiro Watanabee, Yukina Tokikunie, Satoshi Sakurabaf, Daisuke Sawamurae*
a Graduate School of Health Sciences, Hokkaido University, Sapporo, Japan
b Department of Rehabilitation, Higashinaebo Hospital, Sapporo, Japan
c Department of Electronics and Bioinformatics, School of Science and Technology, Meiji University, Kawasaki, Japan
d Electrical Engineering Program, Graduate School of Science and Technology, Meiji University, Kawasaki, Japan
e Department of Rehabilitation Science, Faculty of Health Sciences, Hokkaido University, Sapporo, Japan
f Department of Rehabilitation Sciences, Health Sciences University of Hokkaido, Ishikari-Tobetsu, Japan
* 責任著者

・ジャーナル
NeuroImage
(IF: 5.7, NEUROIMAGINGカテゴリーランキング 3.6%)

・DOI
10.1038/s41598-023-41055-y

・掲載日
2024年6月29日

お問い合わせ先

北海道大学大学院保健科学研究院 リハビリテーション科学分野
教授 澤村 大輔
E-mail:D.sawamura [at] pop.med.hokudai.ac.jp [at]を@に変えてください

教員情報

投稿日: 2024年07月08日

Cookie を有効にする

このサイトをご利用されるときは必ず「サイトポリシー」をご確認ください。このウェブサイトではサイトの利便性の向上のためにクッキーを利用します。本サイトを引き続き閲覧されることで、クッキーの使用を許可したとみなされます。