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北海道大学 医学部保健学科
大学院保健科学院
大学院保健科学研究院

統合失調症者の脳機能と運転能力:ブレーキ反応時の背外側前頭前野の活動、健常者との共通性を発見(リハビリテーション科学分野 岡田宏基助教)

ポイント

  • ドライビングシュミレータでのブレーキ反応課題において、背外側前頭前野の活動に健常者と同様の相関関係があったことを発見した
  • 統合失調症者は、ブレーキ課題、カーブ課題において健常者と同等の運転スキルを示した
  • 治療中の安定した統合失調症者は、健常者同様に安全な運転ができる可能性が示唆された

概要

この研究では、ドライビングシュミレータを用いて治療中の安定した統合失調症者20名と健常者20名の運転スキルと脳活動の比較を行いました。脳活動は、前頭前野を16chのfunctional near-infrared spectroscopy (fNIRS)を用いて計測されました。運転課題は①50 km/hと②100 km/h走行中の急ブレーキタスクおよび、③50 km/hでの左右カーブタスクでした。

この研究の主要な発見は、統合失調症者と健常者がブレーキ課題時に背外側前頭前野の活動において類似した脳賦活パターンを示したことです。統合失調症者が自動車運転時に健常者と同様の相関関係にあったということは、健常者同様に安全な運転ができる可能性があることを示唆しています。

また、統合失調症者は健常者に比べて、100 km/hの急ブレーキ時に背外側前頭前野でより高い脳活動を示しましたが、運転スキルに有意な違いは見られませんでした。この結果は、統合失調症者が健常者よりも高速運転時により多くの脳リソース(神経活動)を利用しているが、運転スキル自体には問題がないことを示唆しています。日常生活レベルでの走行スピード(50km)中の急ブレーキタスク、カーブタスクでは脳活動に差はなく、100km走行中の課題同様に運転スキルに差はありませんでした。

統合失調症は、道路交通法により、運転が制限される可能性がある疾患の一つとされていますが、統合失調症者が事故を起こしやすいという医学的根拠は乏しいままです。急ブレーキタスクやハンドル操作など日常の運転で直面する可能性のある課題への対応能力が示されたことによって、精神障がい者の自動車運転に関するより良い法的・社会的枠組みの構築の一助になることが期待されます。

本研究は、2023年6月5日にPsychiatry Research 誌に掲載されました。

左側の図のように前頭前野の脳活動をfNIRSで測定:日立社製16 チャンネルWOT-110 (Hitachi, Ltd) を使用。右側の写真は、実験場面の様子:Honda社製ドライビングシュミレータ (Honda Motor Company, Ltd.) を使用。

出版情報

・論文タイトル
Prefrontal activation during simulated driving in people with schizophrenia: A functional near-infrared spectroscopy study

・著者
Hiroki Okadaa, Daisuke Sawamuraa, Koji Kunitab, Hiroto Ogasawarac, Kentaro Maedad, Takafumi Morimotoe, Nozomu Ikedae
a Department of Rehabilitation of Sciences, Hokkaido University, Sapporo, Hokkaido, Japan
b Forensic Psychiatry Center, Hokkaido University Hospital, Sapporo, Hokkaido, Japan
c Hokkaido Peer Support Association, Sapporo, Hokkaido, Japan
d Medical Corporation Ooyachi Hospital, Sapporo, Hokkaido, Japan
e Department of Occupational Therapy, School of Health Sciences, Sapporo Medical University, Sapporo, Hokkaido, Japan

・ジャーナル
Psychiatry Research

・DOI
10.1016/j.psychres.2023.115285

・掲載日
2023年6月5日

お問い合わせ先

北海道大学大学院保健科学研究院 リハビリテーション科学分野・助教 岡田宏基
E-mail:h-okada[at]pop.med.hokudai.ac.jp [at]を@に変えてください

投稿日: 2024年02月06日

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