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  • 失認,視覚性失認とは?
  • 視覚性失認の分類
  • リハビリテーションに必要な評価
  • リハビリテーション〔研究紹介〕
  • 【文献】

  • 視覚性失認患者に対するリハビリテーション

    【はじめに】

    1.失認,視覚性失認とは?

    要素的感覚の障害,知能の低下,注意の異常,失語による呼称障害,刺激に対する知識のなさのいずれにも帰することのできない,しかも一つの感覚を通したときにだけ生じる対象認識の障害と定義される (Frederiks 1969).これが視覚に生じた状態を視覚性失認と呼ぶ.

    2.視覚性失認の分類

    @ 知覚型視覚性失認:要素的感覚によりとらえた特徴を,部分的な携帯にまとめあげることができない.対象の形がまったくわからない.したがって,模写ができない.
    A 統合型視覚性失認:まとめあげた部分的形態を全体の形と関係付けられない.したがって,模写はできるが,各部分をばらばらに写し取る形で,ゆっくりとしかできない.
    B 連合型視覚性失認:これらの段階は完了しているが,それを意味と結びつけることができない.したがって,模写はすばやく正確にできる.

    3.リハビリテーションに必要な評価

    物品呼称,異同判断,模写など.特に視覚的に呼称(呼称できなくてもどのような物なのかがわかればよい)できないが,聴覚的または触覚的に同定できるかどうかを確かめることは重要.一般に明暗(輝度),色,運動,面積,肌理・質感などの感覚は正常に近い.さらに,定義にあるこれらの項目(要素的感覚の障害,知能の低下,注意の異常,失語による呼称障害,刺激に対する知識のなさ)もしっかりと確認する.

    4.リハビリテーション〔研究紹介〕

    視覚性失認の患者は共通の特徴をもつ対象同士を取り違えることが多く,自分が利用している特徴が物品固有のものでない可能性を考慮せず,正しい認識に役立つ他の特徴を無視していることが多い(Zihl 2000).
    Zihl(2000)は,統合型視覚失認と思われる患者に対して「誤りなし学習」訓練を実施し,訓練刺激以外の対象にも般化する効果を認めた.我々は,意味記憶障害を伴った知覚型視覚性失認患者に対して,2つの予備的訓練(段階1と段階2:図参照)に続いて同方法を改変して実施した.

    以下に,我々が行った「誤りなし学習」訓練の実施方法と「コップ」についての例を挙げる.
    なお,「 」内は訓練実施者による口頭命令である.
    1)実施者が物品を手渡し,物品名を告げる.
    「これはコップです.声に出してコップと言ってください」
    2)物品の用途を質問する.
    「そのコップは何に使いますか?」 この時,正しい答えが得られなければ,実施者が使用方法を述べる.
    3)物品の特徴をできるだけ多く挙げさせる.
    「そのコップの色や特徴をできるだけ多く言ってください」
    4)物品名を問う.
    「それは何でしたか?」

    各物品に対してこのような質問を繰り返し行った.訓練の目的は,患者の保たれた視覚機能(例えば,色,明暗,質感など)を利用して,物品を特定する方法を学習することにある.結果,訓練に用いた日常物品において,患者の同定成績が向上したが,他の物品に対する汎化は認められなかった.

    【文献】

    1) Josef Zihl著(平山和美監訳)『脳損傷による視覚障害のリハビリテーション』.医学書院
    2) 稲垣侑士, 境 信哉, 伊藤文人, 大槻美佳, 浅野友佳子, 平山和美:
    意味記憶障害を伴った知覚型視覚性失認例に対するリハビリテーションの効果. 高次脳機能研究31:8-18, 2011
    3) 平山和美, 目黒祐子, 境 信哉: 高次脳機能障害の理解と診察 連合型視覚性物体失認. Clinical Neuroscience 30:1218-1219, 2012
    4) 目黒祐子, 平山和美, 境信哉, 早坂順子, 菅野重範:
    見えるけれど分からない‐連合型視覚性失認の一例‐.臨床神経心理15: 11-18, 2004

     

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