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  • プロフィール

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  • 境 信哉(さかい しんや)
  • 北海道大学大学院保健科学研究院生活機能学分野准教授。作業療法士。
    専門は神経心理学、高次脳機 能障害学。
    リハビリテーションの観点から、脳障害による視覚障害に関する研究を行ってきた。

    脳と視覚のリハビリテーション@ 重症心身障害を有する大脳性視覚障害児の視機能評価

  • 大脳性視覚障害(Cerebral Visual Impairment: CVI)とは?
  • CVIの原因
  • 重症心身障害児者(以下,重症児者)とCVI
  • CVIを伴う重症児者に対する視覚評価〔研究紹介〕
  • 視覚リハビリテーション
  • 参考文献

  • 重症心身障害を有する大脳性視覚障害児の視機能評価

    1.大脳性視覚障害(Cerebral Visual Impairment: CVI)とは?

    視交叉(or 外側膝状体)より後方の視覚路における損傷の結果,視(知)覚機能が低下した状態
    ※しかし,CVI児の65%が眼科的問題(視神経萎縮、病的眼振、斜視など)も合併

    2.CVIの原因

    低酸素性虚血,局在性脳病変,脳外傷,感染性脳炎・脳症,新生児低血糖,代謝性障害,
    脳形成異常,染色体障害,てんかんなど
    ※脳性まひ児の60-70%がCVIを合併

    3.重症心身障害児者(以下,重症児者)とCVI

    本邦における重症児者の数は約38,000人(社会福祉法人 全国重症心身障害児(者)を守る会HPより)
    といわれており,CVIは脳性まひとの共通の原因によるため,CVIを伴う重症児者は,少なくともこの38,000人の60-70%と推測される.

    4.CVIを伴う重症児者に対する視覚評価〔研究紹介〕

    重度な心身障害により検査の指示に従えないため,通常の視覚検査を実施することは極めて困難である.そのため,我々は,視運動性眼振法と瞳孔反応法によるコントラスト感度測定を考案し,また視覚行動尺度を開発した.
    @ CVIを伴う重症児者に対するコントラスト感度測定 水平軸に沿って正弦波状に輝度あるいは色度が変化する縞(図参照)を,複数の空間周波数(縞の太さ)それぞれにつき,コントラストを段階的に変化させて提示した.縞を右または左方向にドリフトさせ,その刺激が見えているのならば視運動性眼振が生じることを利用した視運動性眼振法,縞を短時間提示し,その刺激が見えているのならば,縮瞳が生じることを利用した瞳孔反応法の有用性について検討した.それぞれ,提示されて刺激に関する情報をもたない観察者が,視察にて視運動性眼振,縮瞳の出現を判定した.視運動性眼振法は,ほとんどの重症児者に適用でき,有用な方法であると考えられた.


    本研究で使用した縞刺激


    瞳孔反応法を用いたコントラスト感度測定風景

    A CVIを伴う重症児者を対象とした視覚行動評価尺度の開発 先に紹介したコントラスト感度測定は,高価な機器や熟練した判定者を必要とする.そのため,臨床場面で利用することは困難である.そこで我々は,CVIを呈する重症児者を対象とした簡便で包括的な視覚行動評価スケール(CVI重症度評価スケール)を開発した.
    検査項目は8項目であり,刺激に対する反応をA〜D(4段階,色覚のみ3段階)で判定する.おおよそ正常発達における3か月レベルの視覚機能を検査することができる.中等度の信頼性と妥当性を示した.
    マニュアル,記録用紙等はこちらから入手できます» http://www.ot-hokudai.info/

    5.視覚リハビリテーション

    CVIに対する視覚リハビリテーションの主たる方針は,「保たれた視覚の発揮」である.Groenveldら(1990)はCVI児に視覚対象を提示する際の考慮点として,次の1)〜6)を紹介している.

    1)単純な形を単独に提示する
    2)不必要な背景情報を減少させる
    3)輪郭を強調する
    4)色や動く刺激を活用する
    5)視覚的な注意を促す
    6)コントラストを高める

    【参考文献】

    1) Sakai S, Hirayama K, Ogura K, Sakai N, Sudoh M, Murata N, Iwasaki S: Visual function of a patient with advanced adrenoleukodystrophy: comparison of luminance and color contrast sensitivities. Brain & development 30: 68-72, 2008
    2) 境 信哉: 子どもの大脳性視覚障害に対する作業療法. 北海道作業療法 22:2-9, 2005
    3) Sakai S, Hirayama K, Iwasaki S, Yamadori A, Sato N, Ito A, Kato M, Sudo M, Tsuburaya K Contrast sensitivity of patients with severe motor and intellectual disabilities and cerebral visual impairment. Journal of child neurology 17:731-737, 2002

     

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