北海道大学大学院 保健科学研究院 健康科学分野 脳機能計測学研究室

研究内容

イメージ 脳機能計測学研究室は、主に脳磁計(MEG: Magnetoencephalography)という装置を使って脳の機能を計測する研究を行っています。
脳磁計は脳内の神経活動に伴って自然に生じる磁場を計測する装置です。脳のどこが活動し、その活動がどのように時間変化するかを知ることができます。放射線などと違って人体に全く害を与えないのが大きな特徴です。言語や音楽などを知覚する脳活動はヒトに特有で、動物実験ができません。脳磁計は人体に害を与えないため、安心してヒトを対象とした研究をすることができます。しかし一方、脳から出る磁場は、地磁気(方位磁石を振らせる地球の磁場)の1億分の1の強さしかないので、周辺の磁場を遮蔽する特殊な部屋の中で計測します。計測装置自体も液体ヘリウムを使う大掛かりな機器です。
研究室としては、記憶や音楽認知などが主なテーマです。このほか、北海道大学内に加えて、フィンランドのアアルト大学、群馬大学、静岡理工科大学など国内外の多くの研究機関と共同研究を行ってきました。感情やストレス、時間知覚など、身近で健康にも密接にかかわるさまざまなテーマに取り組んでいます。以下にこれまでの研究の例を挙げます。

Koichi Yokosawa, et al., Plos one, Vol. 8, No. 11: e80284 (2013) doi:10.1371/journal.pone.0080284
Shinya Kuriki, et. al., Plos one, Vol. 8, No. 9: e75990. (2013) doi:10.1371/journal.pone.0075990

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記憶

記憶対象を順番に呈示すると、最初や最後のものはよく覚えていますが、真ん中のものは覚えにくいことが知られています(初頭性効果・新近性効果)。7つの矢印(上下左右)を順番に見せ、その後に出てくる数字の順番の矢印方向(2なら2番目の矢印の方向)を思い出して回答する実験を行いました。実験中のα波帯域(8-13 Hz)のリズムを持つ脳磁場は、矢印方向を覚えている間にいったん増大し、その後減少することがわかりました。さらにこの脳磁場は後頭葉の視覚野付近の脳活動によるもので、正解する直前ほど大きくなることもわかりました。加齢によって記憶は衰えますが、一般に新近性効果に比べて初頭性効果のほうが加齢の影響が顕著であると言われています。高齢化社会に向けて、加齢に伴う記憶メカニズムの変化を研究中です。

Keisuke Kimura, et al., Advanced Biomedical Engineering, Vol. 5, pp. 43–48 (2016) doi: 10.14326/abe.5.43
Koichi Yokosawa, et.al., Conf Proc IEEE Eng Med Biol Soc., pp. 4539-4542 (2016) doi: 10.1109/EMBC.2016.7591737

音楽知覚

音楽も言語も物理的には空気の振動です。これが聴覚器を介して脳に伝えられることで初めて音楽になります。音楽はリズム・メロディー・ハーモニーからなっていますが、この中でもリズムに着目した研究を行い、リズムが急に変化すると特異な脳の活動が生じることが分かりました。リズムの変化をとらえる脳活動がわかったことで、音楽を音楽として知覚する仕組みの解明に1歩近づきました。

Yuya Takeshita et.al., Conf Proc IEEE Eng Med Biol Soc., pp. 6650-6653 (2015) doi: 10.1109/EMBC.2015.7319918
Rie Matsunaga, et.al., Neuropsychologia, Vol. 51, pp. 1-10 (2014) doi: 10.1016/j.neuropsychologia.2013.12.014
Rie Matsunaga, et,al., Neuropsychologia, Vol. 50, pp. 3218-3227 (2012) doi: 10.1016/j.neuropsychologia.2012.10.002

時間感覚・衝動性

今日もらう1万円と比べて、1か月後にもらう1万円は価値が低く感じられます。しかしどの程度価値が下がったと感じるかはその人の衝動性によって異なります。ところで、衝動性はその人の時間感覚と相関し、同じ時間をより長く感じる人ほど衝動性が高いこともわかっています。持続する音を聴いているときの脳磁場を計測したところ、左聴覚野の持続的な脳の活動が大きい人のほうが衝動性が高いことがわかりました。人の行動は合理性だけでは説明できず、衝動性は、意思決定、ひいては社会現象や歴史を決める重要な要素です。この研究は社会現象を脳の機能観点からとらえる研究の一環に位置付けられます。

Ruokang Han, et. al., Conf Proc IEEE Eng Med Biol Soc., pp. 6646-6649 (2015) doi: 10.1109/EMBC.2015.7319917

研究室メンバー

教授 横澤 宏一

2017年度

  • 博士課程(D3)竹下悠哉
  • 博士課程(D3)Jared F. Boasen
  • 修士課程(M2)眞野晃次
  • 修士課程(M1)高瀬峻研
  • 修士課程(M1)大西颯
  • 卒業研究生(B4)片岡 璃香
  • 卒業研究生(B4)小川 陽大
  • 卒業研究生(B4)品田 大成
  • 卒業研究生(B4)丁子 慧斗
  • 卒業研究生(B4)橋本 侑里香
  • 客員研究員(北海道大学名誉教授)栗城眞也
  • 客員研究員(神奈川大学准教授)松永理恵
  • 客員研究員(明治大学准教授)小野弓絵
  • 学術研究員(生体応答制御医学分野所属)渡辺隼人

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