食と健康の情報

No.6 LDLの酸化; 平均的な情報? 個々の情報

今回は高度資質分析ラボで開発中の低比重リポ蛋白質(LDL)の酸化状態の評価方法についてお話しをします. LDLの分子量は約230万、大きさが約23nmのほぼ球状の物質です.LDL表面にはリポ蛋白質の一つであるapolipoprotein B100 (apoB100)というリポ蛋白質が表面に吸着しており、内部にはコレステロール、コレステロールエステル、トリアシルグリセライドが含まれています. LDLは活性酸素をはじめ、ラジカルなど種々の刺激で容易に酸化され、酸化LDL(ox-LDL)が生成します. これらは動脈硬化が進展することが知られています. これら酸化LDLには非常に多くの分子が混在しており、apoB100も脂質分解産物であるアルデヒドなどで修飾されます. 従って、サンプル内の個々のLDL粒子の酸化状態が必ずしも同じものではないと考えらます. 以前にも話題にしましたが、LDLの酸化状態を評価するにはLDLに含まれる過酸化脂質など酸化により生成する特定の物質を検出する方法(TBA法、共役ジエン法など)が用いられます. しかし、これらの方法ではサンプル中の平均化された情報しか得ることができせん.
原子間力顕微鏡(AFM)という装置があり、近年は生物関係の研究でも広く利用されています. AFMについては多くの文献、本が出版されていますので、興味があるかたはそれらを参考にしてください. AFMは顕微鏡という名前のつくように表面形状を測定(分解能はサブナノメートルからナノメートルオーダー)するのにも用いられますが、表面電位や硬さなどの情報を得ることができます. 当ラボではLDL粒子の硬さが酸化によりどのような変化するのかということについて検討を行っています. 硬さの計測の原理を簡単に説明すると、カンチレバーという板バネでLDLを一定の力で少し押してみて、変形する量を測定しています(図左).
図右にはLDLを平坦な基板に吸着させたときの表面形状をAFMで観察したときの一例を示しました. 吸着したLDL粒子が観察されています. 吸着したLDLの硬さを測定すると酸化時間がながくなるにつれて、硬さが変化(柔らかくなっていく)していくことが判明しました. 今後は測定条件などを最適化してより正確に個々のLDLの硬さを評価することも可能と考えられます. 高度脂質分析ラボでは新しい視点で測定方法や評価基準の開発なども行っております. 興味がある方はご連絡をお待ちしております.

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2016年8月23日

武田晴治

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