食と健康の情報

No.11 非メチレン系脂肪酸

本コラムでは天然に存在する特殊な多価不飽和脂肪酸、非メチレン系脂肪酸について紹介します。
天然に存在する多価不飽和脂肪酸の多くは二重結合間にメチレン基 (-CH2-) を1つだけ挟む1,4-ペンタジエン構造を規則的に有しています。その一方で、共役二重結合を持つ脂肪酸 (共役脂肪酸) や、二重結合間にメチレン基が2つ以上挟まれている脂肪酸 (非メチレン系脂肪酸) など、不規則的な化学構造を有する脂肪酸も存在しています。このような脂肪酸は主要な多価不飽和脂肪酸とは異なる特徴的な化学構造を有することから、生体に対しても異なる生理活性を示すのではないかと考えられています。
今回紹介する非メチレン系脂肪酸はマツやカヤなど、裸子植物の種子に多く含まれています。また、近年では腹足類などの一部の貝類にも極微量ですが含まれていることが報告されています。非メチレン系脂肪酸の一例としてピノレン酸 (図1上) やシアドン酸 (図2)などが挙げられます。
ピノレン酸は炭素数18、二重結合数3の脂肪酸であり、γ-リノレン酸 (図1下) に類似した構造をしており、マツの実 (図3左) の脂質中に10~15%含まれています。マツの実が広く食されていることもあり、その生理機能に関する研究も多数なされています。その一例として、γ-リノレン酸と同様に血中コレステロールの低下作用の他、腸内ホルモンの分泌を介した食欲調節作用など、γ-リノレン酸と異なる生理機能も示すといった報告が挙げられています。
また、シアドン酸はカヤの実 (図3右) の脂質中に5~10%程含まれています。近年、カヤの実から得られるカヤ油がラット肝臓中の中性脂肪を低下させることが報告されていることから、シアドン酸には脂肪肝を予防する効果があると考えられています。
今後、このような生理機能を有する特殊な脂肪酸を多く含む天然物が見つかれば、その生理機能に関する研究もどんどん発展していくかもしれません。

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2016年8月16日

津久井 隆行

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