食と健康の情報

No.2 慢性腎臓病と脂質

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慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease, CKD)という言葉を聞いた方も多いと思います。CKDの定義は以下のようです。

下記の1,2のいずれか、または両方が3か月以上持続する。
1.腎障害の存在が明らか
(1)蛋白尿の存在、または
(2)蛋白尿以外の異常
病理、画像診断、検査(検尿/血液)などで腎障害の存在が明らか
2.GFR<60(ml/分/1.73m2)
*GFR: 糸球体濾過率(腎臓の老廃物をろ過する能力ことです)

我が国の20歳以上の成人において、GFR 60未満の人が19%(約2000万人)います。これは糖尿病の頻度とほぼ同じです。CKDは透析や腎移植を必要とする末期腎不全の予備軍であり、腎不全以外の合併症(虚血性心疾患など)のリスクともなります。CKDのハイリスク群として、糖尿病、高血圧、メタボリック症候群などが挙げられます。したがって、CKDを代謝学的な観点から理解することが検査法や予防法、治療法を見つけるために必要です。しかし、腎臓の代謝は不明の点が多かったのです。
ごく最近、糖尿病性腎症の患者さんの腎臓で、脂肪滴の蓄積が糸球体上皮細胞、糸球体間質細胞、近位尿細管上皮細胞などで確認されました。また、脂質代謝関連遺伝子の異常も同時に認められました(Herman-Edelstain M et al. J Lipid Res 55:561-72, 2014)。肝臓や骨格筋の脂肪滴研究と比べると遅れましたが、腎臓の脂肪滴研究もこれから活発化するかもしれません。高度脂質分析ラボでは、CKDの患者さんの尿に混じっている脂肪滴を持った細胞に注目して分析を進めています(図)。CKDを予防する食品が見つかれば、多くのCKD予備軍の方が救われ、医療費も抑えられます。その日を夢見て研究を続けています。

 

2016年8月16日

千葉仁志

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