食と健康の情報

No.9 二つの抗酸化

酸素を利用して生きる私たちの体内では、日々、老化や疾患の原因となる酸化ストレスが生じています。生体内には酸化ストレスを軽減させる抗酸化酵素がありますが、年齢とともに低下していきます。そこで、食品中の抗酸化物質を摂取し、酸化ストレスを軽減させることが健康維持や疾患予防に必要であると考えられています。最近、抗酸化物質を作用の仕組みから二つに分ける考え方が出てきましたのでご紹介します。
抗酸化物質を、直接的抗酸化物質(direct antioxidants)と間接的抗酸化物質(indirect antioxidants)の二つのグループに分ける考えが、最近、Talalayらによって提案されています。直接的抗酸化物質は酸化ストレスに直接作用して抗酸化を発揮する物質です。例えばローズマリー酸やアスコルビン酸(ビタミンC)など、従来からラジカル吸収能のある物質として知られているものがここに分類されます。一方、indirect antioxidantsは、私たちの細胞内にもともと存在するKeap1-Nrf2経路を活発化させることにより抗酸化酵素や毒物代謝酵素の遺伝子群を発現させて間接的に酸化ストレスを減少させます。このような抗酸化物質の例としては、最近、テレビで話題になることが増えたスルフォラファンがあげられます。クルクミン(ウコン)も後者の性質が強い抗酸化物質です。私たちのこれまでの研究では、直接的よりも間接的な抗酸化物質のほうが細胞を酸化ストレスから保護する性質が強いことが分かりました。しかし、間接的抗酸化物質はしばしば細胞毒性が強いことも見いだしていますから注意する必要があります。
私たちの研究室では、マガキ(オイスター)の抽出物から新しい抗酸化物質としてDHMBAを見いだしています。肝培養細胞を用いた研究で、DHMBAには直接的抗酸化物質としての作用のほか、Keap1-Nrf2経路も活性化する作用もあり、細胞を酸化ストレスからよく守ります。幸いなことにDHMBAは高濃度でも細胞毒性がなく、非常に使い易い物質であることも確認しました。DHMBAだけでなく、他の食品成分のなかにもそのような優れた性質のある抗酸化物質があるかもしれません。それを探す研究を私たちは進めています。もし、そのような研究に関心のあるかたがいらしたら、どうぞお声掛けください。

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2016年8月16日

上甲紗愛、布田博敏

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