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児童青年精神医学の臨床研究

1.児童・青年期のうつ病に関する臨床研究

  • 1999年に北海道大学病院を受診した児童・青年期のうつ病の病像、治療、転帰について検討を行いました。次に、2003年には、札幌市、千歳市、岩見沢市の小中学生3331人に対しうつ病評価尺度を施行し、わが国の小中学生の13.0%(小学生7.8%、中学生22.8%)が抑うつ傾向をもっていたことを明らかにしました。さらに2007年に、千歳市の小中学生738人に対し、精神科医が直接面接することにより、小学4年生から中学1年生の大うつ病性障害の有病率は1.5%であり、中学1年生では4.1%と高い有病率であることを明らかにしました。今後は、子どものうつ病と広汎性発達障害(自閉症、アスペルガー障害など)および不安障害との関係を解明していきたいと考えています。

2.児童・青年期の発達障害、精神障害に関する臨床研究

  • 現在、毎週木曜日に楡の会こどもクリニック( http://www.nire.or.jp/ )において、毎週月曜日には北海道大学病院精神科神経科(再来のみ)において、子どもの精神科外来を行っています。広汎性発達障害(自閉症、アスペルガー障害など)、注意欠陥多動性障害(AD/HD)、気分障害(うつ病、躁うつ病など)、神経症性障害(強迫性障害、パニック障害、社会不安障害など)、統合失調症、摂食障害などさまざまな精神障害をもつ子どもの臨床および研究を行っています。

新しい精神科リハビリテーションの臨床研究

1.精神科リハビリテーション学の実証的研究

  • 現在、精神科の臨床においては、精神科作業療法やデイケアは大きな広がりを見せ、今やどの病院や施設でも行われるようになっていますが、精神科リハビリテーションに関するエビデンスは決して多くありません。SSTや心理教育についての欧米の報告はいくつもありますが、わが国で行われた精神科リハビリテーションに関するきちんとした研究はきわめて少ないのが現状です。今後、精神科リハビリテーションの実証的研究を行っていきたいと考えています。

2.うつ病の復職支援プログラム(RAP)の実践

  • わが国では1998年以来、毎年3万人以上の方が自殺で亡くなっています。この数字は交通事故死亡者の5.5倍という異常な数値です。自殺者は生前に70〜90%が何らかの精神疾患に罹患しており、60〜70%がうつ病の診断に当てはまると報告されています。また、うつ病のために休職される方も膨大な数にのぼっています。北海道大学病院精神神経科では平成18年より、精神科リハビリテーションとしてうつ病の復職支援プログラム(RAP)を開始しました。多くの方々が、うつ病をきっかけに、仕事を、家族を、人生を見つめ直し、より豊かな人生観を携えて、職場に帰っていきます。私たちは、医師、看護師、作業療法士、臨床心理士などがチームを組んで職場復帰への支援をしたいと考えています。

3.広汎性発達障害やAD/HDなどの発達障害リハビリテーションの構築

  • いま、児童青年精神医学およびその療育・教育・福祉は、大きな曲がり角を迎えています。児童精神科の外来は、広汎性発達障害(自閉症、アスペルガー障害など)や注意欠陥多動性障害(AD/HD)などの受診が急増し、新患予約は数ヶ月待ちであったり、児童精神医学の学会では発表のほとんどが発達障害に関する内容であったり、教育の現場では、特別支援教育によって大きな混乱が生じていたり、まさに空前の「発達障害バブル」の時代を迎えています。しかし、このような時代だからこそ、バブルに浮き足立たず、地道な臨床実践を重ねながら、今一度原点に戻って「子どもの心の発達とは何か」「発達の障害とは何か」「その療育とは何か」を考えていかなければなりません。それは同時に、私たち医療、教育、福祉に携わる者すべてが、その人間観あるいは生き方そのものを問われているのかもしれません。発達障害リハビリテーション学の構築を目指していきたいと考えています。

代表的な論文

<平成21年度>

  • うつ病・躁うつ病.児童青年精神医学とその近接領域,50(50周年記念特集号): 209-216, 2009.8
     うつ病・躁うつ病

<平成20年度>


傳田健三研究室の紹介(大学院生の研究テーマ)

児童精神医学,臨床精神医学,精神科リハビリテーションに関係するテーマをもった研究グループです。大きな研究テーマとして、「児童・青年期の気分障害(うつ病性障害・双極性障害)に関する臨床的研究」「広汎性発達障害(自閉症・アスペルガー障害)に対する臨床的研究」「精神障害者に対する認知リハビリテーション」「うつ病・自殺対策予防−うつスクリーニングの実践研究」があります。「発達」と「認知」をキーワードに幅広い研究を行っていきたいと思っています。

[大学院生と研究テーマ]

  • D3 大宮秀淑
  • 研究テーマ:「統合失調症患者に対する効果的な認知機能リハビリテーション研究」(後期博士課程課題:研究計画書 要旨PDF)
    論文:「慢性期統合失調症患者に対する認知機能改善療法(CRT)の効果研究:前頭葉/実行機能プログラム(FEP)を用いた症例報告.精神科治療学,29(6): 811-816, 2014」
    要旨PDF
    論文「前頭葉/実行機能プログラム(FEP)を用いた認知機能改善療法(CRT):認知機能と社会機能は改善するか.臨床精神医学,in press」 要旨PDF
    論文:The effects of cognitive remediation therapy using the frontal/executive program for treating chronic schizophrenia. Neuropsychiatric Disease and Treatment  (in press) 要旨PDF
  • D2 宮島真貴
  • 研究テーマ:「精神疾患における神経認知の基盤解明とリハビリテーションの検討」(後期博士課程課題:研究計画書 要旨PDF
    論文:Discrepancy of Neural Response between Exogenous and Endogenous Task Switching: an ERP study. Neuro Report, 23(11): 642-646, 2012」要旨PDF
    論文:「小・中・高校生の自閉傾向に関する実態調査―自閉症スペクトラム指数日本語版(AQ-J)を用いて―.最新精神医学,17(4): 364-370, 2012」 要旨PDF
    論文:「5症例の統合失調症患者に対する認知矯正療法の治療効果.PT-OT-ST Channel Online Journal, Vol.2, No.1, 2013」 要旨PDF
  • M2 安井勇輔
  • 研究テーマ:「電話・面接相談から見える悩みと社会情勢との関連」(修士課程課題:研究計画書 要旨PDF
    論文「電話・面接相談の相談内容と社会情勢との関連−北海道家庭生活総合カウンセリングセンターの実態から−.こころの健康,29(1): 96-104, 2014」 要旨PDF
    論文「うつ病により休職した地方公務員に対する職場復帰支援プログラムの検討.臨床精神医学,in press」 要旨PDF

[大学院修了者と業績]

  • 修了者(平成24年度博士後期課程修了) 
    佐藤祐基(平成25年3月25日 博士後期課程卒業)
    研究テーマ:「児童・青年期の気分障害とcomorbidityに関する臨床的研究」
    博士論文:「児童・青年期の気分障害、広汎性発達障害に関する臨床的研究」 論文PDF
    論文:「児童・青年期の大うつ病性障害のcomorbidityに関する臨床的研究,児童青年精神医学とその近接領域,54(1): 27-41, 2013」 論文PDF
    論文:「児童・青年期の双極性障害に関する臨床的研究,児童青年精神医学とその近接領域,55(1): 1-14, 2014」 論文PDF
    論文:「ファンタジーへの没頭を示したクライエントが現実との繋がりを形成するまで−広汎性発達障害が疑われる男子中学生の事例−.心理臨床学研究,28: 279-290, 2010」
    要旨PDF

    修了者(平成25年度博士後期課程修了) 
    井上貴雄(平成26年3月25日 博士後期課程卒業)
    研究テーマ:「児童・青年期における抑うつ症状、躁症状および自閉傾向について」(後期博士課程課題:研究計画書 要旨PDF
    博士論文:「児童・青年期の抑うつ症状,躁症状,および自閉傾向に関する臨床的・疫学的研究」 要旨PDF
    修士論文:「青年期広汎性発達障害者に対する支援と効果」要旨PDF
    論文:「小・中・高校生における抑うつ症状、躁症状および自閉傾向.児童青年精神医学とその近接領域 54(5): 571-587, 2013」 要旨PDF
    論文:「青年期広汎性発達障害者に対する支援と効果.作業療法 31: 109-116, 2012」
    要旨PDF
    論文:「青年期広汎性発達障害者に対する精神科リハビリテーションの実践−札幌市精神保健福祉センターにおける取り組み−.作業療法 30: 107-112, 2011」 要旨PDF

    修了者(平成25年度修士課程修了) 
    大澤茉梨恵(平成26年3月25日 修士課程卒業)
    研究テーマ:「千歳市におけるうつ病・自殺予防対策−うつスクリーニングの実践的研究(修士課程課題:研究計画書 要旨PDF
    修士論文:「千歳市におけるうつ病・自殺予防対策−うつスクリーニングの実践的研究−」論文PDF
    論文:「一般市民における抑うつ傾向―自殺予防対策としてのうつスクリーニング事業から―.臨床精神医学,43(2): 249-257, 2014」論文PDF



大学院生・研究生の募集

傳田健三研究室は以上のような臨床実践と研究を行っています。児童精神医学、精神科リハビリテーション学は魅力的で、奥が深い学問です。ともに学んでいく大学院生および研究生を募集しています。