研究室紹介(北海道大学 大学院保健科学研究院 生活機能学分野)

傳田 健三(でんだ けんぞう)

児童精神科医・北海道大学大学院保健科学研究院 生活機能学分野 教授

 保健科学研究院とは健康を科学する部門です。現在、医療は科学技術の急速な発展にともない、高度先進化が進んでいます。一方、わが国では、少子化・高齢化が進み、在宅ケアを始めとする自立支援・地域生活支援や運動・生活機能の回復支援の充実が急務です。また、中高年世代においては、ライフスタイルの大幅な変化により、生活習慣病、メタボリックシンドローム、うつ病などの疾患の急速な増加が明らかになっています。すなわち、現代の医療は、高度先進医療と同時に、国民の健康増進や疾病予防を考慮し、QOL(Quality of life)の維持を重視した新たな健康価値観を構築しなければなりません。それが健康を科学するということです。
   生活機能学とは心や身体に障害を持つ人が、その人らしい生活を作り直すことを目指すリハビリテーション学といえます。私たちはその手段として作業療法を用います。ここでいう「作業」とは食事や入浴といった日常の生活に関わる活動、パソコンを使ったデスクワークや勉強などの仕事、そして趣味やスポーツ、レクリエーションなどの遊びといった諸活動を指します。つまり、人の生活すべてが「作業」なのです。健康な生活を取り戻すために、「作業」を用いて、持てる能力を最大限に引き出すお手伝いをすることを目標としています。
 また、私の専門は児童青年精神医学です。これまでの統合失調症や気分障害の精神科リハビリテーションを基礎として、児童精神医学におけるうつ病、広汎性発達障害、AH/HDなどを含んだ総合的で新しい精神科リハビリテーションを構築していきたいと考えています。児童青年精神医学の診療と研究も継続して行っていきます。

自己紹介

1957年 静岡県沼津市に生まれる。
1981年 北海道大学医学部卒業。北海道大学病院に勤務。

山下格教授の北海道大学精神医学講座に入局した。山下教授は医学的生物学的な考え方を基本に据えながらも、力動的心理学的な見方と治療に努めることをモットーとしておられた。これが、神経症や心身症の病態や治療に関する多くの業績に繋がっており、臨床と研究のバランスを重視する伝統が受け継がれていた。

1982年 市立旭川病院精神神経科に勤務。

ここで臨床精神医学の基礎を学んだ。自由で学際的な先輩達のもとで精神医学の素晴らしさと奥の深さを教えられた。当初からの志望であった児童精神医学の手ほどきも受け、箱庭療法や絵画療法を開始した。

1987年 市立札幌病院静療院 児童精神科に勤務。

児童精神医学を本格的に学んだ。広汎性発達障害(自閉症、アスペルガー障害など)や注意欠陥多動性障害(AD/HD)の子どもたちの入院・外来治療、あるいは不登校の子どもたちに対する集団精神療法などを精力的に行った。

1990年 北海道大学助手として医学部精神医学講座に勤務。

北海道大学精神科神経科において「臨床精神病理学グループ」を立ち上げ、精神医学の臨床と研究に従事する。とくに摂食障害、強迫神経症、パニック障害、対人恐怖症などの症候論的検討、薬物療法ならびに精神療法の研究を行った。また、児童・青年期症例の治療技法、非言語的精神療法、認知行動療法などを研究した。

1993年 北海道大学講師として医学部精神医学講座に勤務。

精神医学の臨床と研究に従事するかたわら、長年にわたり病棟医長および医局長として、病棟の管理・運営、若手医師の指導・教育、学生の指導・教育、他病院との連携なども幅広く行った。

1998年 文部省在外研究員としてロンドン大学精神医学研究所ならびに英国王立ベスレム病院へ留学。

ロンドン大学精神医学研究所(IOP)では児童青年精神医学講座に在籍し、児童青年期精神障害の臨床研究に従事し、英国王立ベスレム病院では青年期病棟と摂食障害病棟で勤務した。

1999年 北海道大学大学院医学研究科精神医学分野 准教授として勤務。

帰国後、研究の対象は「子どものうつ病」が中心となっていった。2003年には文部科学省が初めて取り組んだ「子どものうつ病」に関する大規模調査のリーダーをつとめ、わが国で初めて「子どものうつ病」の実態について明らかにした。

2008年 北海道大学大学院保健科学研究院生活機能学分野 教授として現在に至る。

生活機能学とは精神科リハビリテーション学と言い換えることができる。これまでの統合失調症や気分障害の精神科リハビリテーション学を基礎として、子どものうつ病、広汎性発達障害、注意欠陥多動性障害なども含んだ総合的な精神科リハビリテーション学の教育と研究を行っている。

専 攻

臨床精神医学,児童青年期精神医学,精神科リハビリテーション学

学 会

日本児童青年精神医学会(理事,編集委員長)、日本精神科診断学会(評議員)
日本精神病理学会(評議員)、日本心身医学会(評議員)、日本精神神経学会
北海道家庭生活カウンセリングセンター(理事長)

著 書

「子どもの双極性障害−DSM-5への展望−」 金剛出版、2011  
「対人援助者の条件」(共編) 金剛出版、2011 
「若者の『うつ』−新型うつ病とは何か−」 筑摩新書、2009  
「子どもの摂食障害−拒食と過食の心理と治療−」 新興医学出版社, 2008
「子どものうつに気づけない! 医者だから言えること、親にしかできないこと」 佼成出版社, 2007  
「大人も知らない『プチうつ気分』とのつきあい方」 講談社, 2006  
「小児のうつと不安−診断と治療の最前線−」 新興医学出版社, 2006
「子どものうつ,心の叫び」 講談社, 2004
「子どものうつ病-見逃されてきた重大な疾患-」 金剛出版,2002
「拒食症サバイバルガイド」(共訳) 金剛出版,2000
「子どもの遊びと心の治療」 金剛出版,1998